副作用をサルで予測できず‐抗体医薬で代替法提案へ/日本製薬工業協会

国内で承認された抗体医薬品を対象にサルを用いた非臨床安全性評価でヒト副作用の予測性を評価したところ、ヒトにおける副作用を検出できない医薬品が多いことが、日本製薬工業協会基礎研究部会が実施した調査研究結果で判明した。サルの短期毒性試験と長期毒性試験で毒性用量を比較し、試験期間を延長した場合でも結果に変化が見られず、長期試験のニーズも疑問視される結果となった。今後、製薬協はサルとヒトで一致している所見などを掘り下げて研究し、サル毒性試験の削減や動物実験代替法ニーズが高い臓器などを提案していきたい考え。

新薬の非臨床安全性評価で動物実験の削減が求められる中、特に非ヒト霊長類(サル)の使用削減が課題となっており、規制当局は動物試験の3Rsの原則に従って可能な限り動物試験を削減し、動物実験の代替法の活用を推進している。
同部会は、国内承認薬におけるサルの使用状況や代替法の機会に関する調査研究として、2016年から22年に国内で承認された850医薬品のうち新有効成分含有医薬品として承認された288品目を対象に調査した。
その結果、約半数に相当する140品目で非ヒト霊長類を用いた試験が実施され、計1万4000例以上の個体が使用されていた。モダリティ別に見ると低分子製剤、抗体製剤、蛋白製剤などいずれのカテゴリーでも一般毒性試験での使用が多く、約1万例が使用されていた。16~22年の調査期間では非ヒト霊長類の使用数が減少している傾向は確認されなかった。
サルを用いた一般毒性試験は臨床試験までに3カ月間の試験、承認を取得するまでに半年間の試験を実施する必要があることから、長期毒性試験の必要性についても調査を行った。
抗体医薬品を対象にサルの短期毒性試験と長期毒性試験での無毒性用量(NOAEL)を比べたところ、4週時点で得られたNOAELは試験を継続した場合も「変化がなかった」品目が多く、短期毒性試験で対応できるケースが多い可能性が示唆される結果となった。

さらに、抗体医薬品を対象にサルを用いた非臨床試験で副作用予測を行ったところ、サルで認められた毒性からヒトの副作用を予測できたケースが少ないことも判明した。呼吸器や消化器、中枢神経系、免疫、血管、心臓、眼科、口腔などの臓器では臨床試験で初めて副作用が確認され、サル試験では毒性の所見が見逃されている傾向が浮き彫りとなった。
一方、低分子医薬品を対象としたサルの毒性試験では、肝臓や消化器の副作用については高い割合で予測できていた。
これらを踏まえ、製薬協は、▽サルとヒトで一致している所見、一致していない所見の深堀▽ヒト臨床での副作用発現頻度を考慮したサル毒性試験の予測性確認▽げっ歯類を用いた毒性試験のデータの追加▽臨床で開発中止となった化合物の調査――などを実施し、サル毒性試験の削減やヒト細胞を用いた代替法ニーズが高い臓器を提案していきたい考えだ。

2025.7.16