AIで不正製造リスク減‐デジタル技術活用事例集/厚生労働省

 厚生労働省は、2024年度版「医薬品製造業におけるデジタル技術活用事例集」を公表し、製薬団体向けに周知した。GMP活動に関する疑問を生成AIに問い合わせるシステムの導入により、逸脱・不正製造リスクの減少を図る取り組み等を紹介している。

 事例集は、医薬品製造販売業者の意思決定者に品質保証・向上、生産性向上等のメリットを提示して業界におけるDXを促し、既にITシステムやデジタル技術を導入済み企業の利用者や管理者には、データや技術の活用、応用事例を通じて業務最適化のアイデアを提供することを狙いとしている。

 事例の一つとして、「生成AI技術を活用したナレッジマネジメント導入」では、GMP活動での小規模な問題発生時に、医薬品医療機器等法やGMP省令など関連規制の参照や解釈が業務経験の浅い社員にとって難しいため、生成AIで膨大な情報を一元管理することで、社員の知識を補填し、逸脱や不正製造の発生リスク低減につなげるとした。一元管理されたデータベースの不在、品質保証部門担当者の知識(情報)の標準化が不十分といった現状に対応するもの。

 また、「教育訓練管理システム(LMS)の導入」では、紙媒体を正版として管理されている教育訓練記録について、教育完了までのリードタイムが長期化する傾向にあるため、記録を電子化した。運用開始後、各部門の教育管理担当者の業務負荷が大幅に減少し、システム内で期日管理やリマインドもできるようになり、受講漏れや受講忘れゼロが実現した。

 「環境システムモニタリングシステム(EMS)の導入」では、環境データ(湿度・温度・差圧・微粒子等)は空調設備に付帯するチャート紙式記録計で記録されていたが、定期的な紙交換、紙詰まりやインク切れによる記録の歯抜けも発生していた。

 EMS導入により、データを自動収集し、サーバ上で保管管理、アーカイブ化されて紙の記録は不要となり、記録作成やレビューが簡素化されたとしている。

2025.8.27